その日士郎は気付いていなかったのだが、12才の誕生日を迎えた。
そしてそれと共にある異変が起こっていた。








 
朝5時半
士郎はいつもと同じ時間に起床はしたが、その日は事情が違った。

                    「、、せ!、、せ!、、せ!」
頭痛と共に声が響いてくる。
それが何を言っているのか分からなかったがとても不快に感じられた。
 
それはリィゾとの剣の練習の時にも如実に表れていた。
「どうした、士郎?剣が鈍っているぞ」
「すいません、リィゾさん。朝から頭痛がしてて、、、」
確かに士郎の顔は日が差しているにしては赤かった。
「そうか。では今日はもういい。姫様にも今日は何もしないように頼んでおく」
「申し訳ないです」
そう言って城に戻っていく士郎の背中をリィゾは不安げに睨んだ。








 
その日の夜
夕食を終えた士郎の顔は真っ赤であった。
「士郎、大丈夫?」
「大丈夫、でも、、ありません、、、」
「もう今日は寝たほうがいいわ」
「はい、、、」
既に返事を返すことさえ、ままならなかった。
 







「はぁ、、、はぁ、、、」
士郎は自室へ廊下を壁に手をつき、息を荒くして向かっていた。

                      「犯せ!犯せ!犯せ!」
痛と共に聞こえていた声が今ははっきりと聞こえる。
それがどういう意味を持つのか、士郎は知らない。
ただ、今はアルトやリィゾ達を視界には入れたくなかった。
見てしまえば何をするか自分では分からなかったからだ。

                      「犯せ!犯せ!犯せ!」
未だ響いてくる声にあらがおうとするが精神が保たずその場に崩れ落ちた。








 
「士郎!」
あの後士郎が心配になったリィゾは廊下に倒れ込んでいる士郎を見つけた。
「士郎!しっかりしろ!」
抱きかかえ呼びかけると、
「リィ、、、ゾ、、、さん、、、」
返答は帰ってきたが、リィゾはその時息をのんだ。
のぞき込んだ士郎の顔がとてつもなく色っぽかったからだ。
リィゾは他人に対して一度もそのような気持ちを抱いたことはなかった。
ましてや同姓である男に対して。
「リィ、、、ゾ、、、さん」
士郎がリィゾの名を呼びながら手を伸ばしてくる。
開いた口の中は何か別の生き物が蠢いているかのように見え、その手が触れれば何かが終わってしまうかのようにリィゾには思えた。
リィゾには士郎の言葉が悪魔のささやきのように聞こえ動けなかった。
もう少しで手が顔に触れる。
「リィゾ、士郎はどうしたの?」
その言葉に、はっと顔を前に向けると目の前に主である、アルトルージュ・ブリュンスタッドが立っていた。
「どうしたのリィゾ?今貴方すごい顔をしてたわよ」
クスクスと笑っているアルトルージュが今のリィゾにはありがたかった。
「姫様」
「まぁいいわ、リィゾ士郎を私の部屋に運んで」
今のこの状況でその言葉がどういう意味を持つのか分からないほどリィゾは鈍くはない。








 
結局彼女の言うようように士郎をアルトルージュの部屋に運びベッドに寝かせた。
「姫様、士郎はまだ子供です!」
「ええ、わかってるわよ」
「ですから、、、」
「大丈夫よ、私も一応常識はわきまえているわ」
そう言われては仕える身であるリィゾからは何もいえない。
渋々とリィゾは部屋を出て行った。
部屋を出たリィゾの気配がなくなってからアルトルージュは口の端を歪めた。
彼女はリィゾの警告など気にもとめていなかった。
彼女は夕食のときの士郎の様子から何が起こっているのか察していた。
そして士郎を自分のものにしたいと決めたときから望んでいたことを行おうと、士郎の服を脱がしていった。
この夜、士郎は『少年』から『男』になり、それと同時に一人の『父親』になった。








 
朝6時
いつもより少し遅れて士郎は起きた。
自分が今どうなっているのか記憶にはないが、頭痛は治まっていた。
とりあえずベッドから下りようと体を起こすと何かが体を引っ張った。
そちらに視線を向けると裸のアルトルージュが抱きついていた。
その瞬間、士郎は何もかも思い出し顔を真っ赤にして気絶した。








 
正午
再び士郎は目を覚ました。
隣にアルトルージュはおらず、安堵のため息を吐く。
そしてこの部屋が自分のではなくおそらくだがアルトルージュの部屋だと言うことに気付いた。
彼女の部屋に入ったことはなかったがこれが女性の部屋なんだろうな、と思いながらテーブルのにあいてある服を着ながら思っていた。








 
「おはようございます」
食堂に入りそう言った。
既に正午を過ぎているが起きたばかりのためこう言うしかない。
「おはよう、士郎」
「お、おはようございます、アルト姉さん」
若干デジャヴを感じつつアルトに返事を返す。
「おはよう士郎」
「おはようございます、リィゾさん。昨日は、その、、、すいません」
「気にするな。それより体は大丈夫か?」
「いろいろ大丈夫じゃありません」
「姫様!」
「何よ、リィゾ?それにしても士郎の寝顔はかわいいわね」
既に終わってしまったことを問いただしても仕方がないため、
「次は本気で怒りますよ!」
釘を刺しておくことにした。








 
「士郎」
士郎が昼食を終えてからアルトが話しかけた。
「なんですか」
「今日は何もしなくて良いからゆっくりしてなさい」
「そうだなおまえはずっと何かをしてばかりだから今日は休息をとれ」
「休息ですか、、、」
いきなり言われても今まで体を鍛えること以外あまりしてこなかったため士郎としては非常に困った。
「何かやりたいことはないの?」
「そうですねぇ、、、」
考えた末に士郎はこう言った。
「街へ行きたいんですが」
アルトルージュの城は山奥にありその麓(ふもと)にはあまり発展していないが町があった。
「そうかならばこれを持って行け」
そういってリィゾはサングラスと紙幣が数十枚入った財布を渡す。
白髪は良いとしていくら何でも目隠しをしていては目立ってしまう。
しかし紅い目も注目を集めるため密かにリィゾが用意していた物だった。
「ありがとうございます」
士郎もその意図に気付き早速サングラスをかけ城を出た。








 
「すいませんこれ下さい」
士郎が街について最初にしたこと、それは食べ歩きだった。
先ほど昼食を食べ終えたばかりだったが、毎日鍛錬ばかりしている士郎の体は新陳代謝が激しく、朝食を抜いていたため、だいぶ足りなかった。
それにあまり多くの料理を知らないないため、士郎にとっても非常に参考になった。
一時間ほど食べ歩きを終えた後士郎は図書館に足を向けた。
アルトルージュの城にも書物はあるが新しい本はなく、新聞などもないため最近世の中で何が起こっているのか全く知らなかった。
そう思い大量の本と新聞を読み耽っていた。
しかし図書館にいる人たちからはとても奇異に見えた。
なぜなら見慣れない子供がむさぼるように大量の本と新聞を読んでいたからだ。
決して士郎の容姿が愛らしいからではないと全員が思っていたが。








 
午後6時
図書館が閉館であるため仕方なく再び食べ歩きを再開しようと考えていた矢先に声をかけられた。
「ねぇ、きみ」
「はい」
呼びかけた声のほうに振り向くとそこには露出度の高い衣服を着た女性が立っていた。
「ねぇ、君、今暇?」
本来であればこの時間帯ならば子供は既に家に帰っている。
だから彼女はまだ外をうろついている士郎に声をかけたのだ。
「少しなら」
「じゃあちょっと私につきあってくれない」
「別に構いませんが」
「本当!ありがとう」
そう答えた瞬間士郎は手を引っ張られた。
今日はゆっくりするようにと言われたためズボンに重りは入れておらず、士郎はその女性に連れて行かれた。
何度か路地を曲がってたどり着いたところは地下に向かって階段が続いていた。
ドアの所に「Ein Gasthaus」と書いてあった。
 







「ママ〜、ちょっと良い〜?」
「おやレイラどうしたんだい?」
ドアを開けて入ってきた女性にカウンターでグラスを拭いていた30才前半の女性、マイアが声をかける。
「うんちょっとね『部屋』を貸して欲しいんだけど。」
「ほぉ、おまえがな。珍しいじゃねえか」
そう声をかけたのはテーブルでビールを飲んでいた日焼けした肌に筋肉質の黒髪の女性、ラミスが声をかける。
「まぁね昼間偶然見かけてね。ずっと目をつけてたの」
その言葉にその場にいた全員、女性の視線が集中する。
彼女たちはとあることで金を稼いでおり、ここはそんな女性が集まるバーである。
「あんたがそんなに言う子なの?」
レイラとよく一緒に仕事をするドレスを着た女性が尋ねる。
「後であんたにも回してあげるわよ」
「楽しみにしておくは」
そういって彼女は自分がいたテーブルに戻りレイラはどの外にいた士郎を招き寄せる。
「じゃ、入ってきて」
「失礼します」
一言断りを入れてドアをくぐると同時に酒のにおいが漂ってきた。
テーブルが8つ、そのすべてが埋まっており、あいているのはカウンターの席が5つ。
その場にいた全員が士郎に視線を向ける。
そして誰もが息をのんだ。
士郎としては何故自分がこんな目に遭っているのかよく分からなかったがとりあえず今は何も聞かないことにした。
「じゃ、ママ〜『部屋』借りるよ〜」
そういって壁に掛かっている鍵を取る。
「さ、こっち」
部屋の奥にあるドアに向かって士郎を引っ張りながらテーブルの間を通っていく。
その間も士郎はじっと視線を向けられ続けた。








 
ドアの向こうにはベッドが二つ並んでいてその枕元には水差しと白い液体の入った瓶がおいてあった。
それがなんなのか解析することで彼女が何をしたいのか士郎は分かった。
ドアに鍵をかけるとレイラは服を脱ぎ始めた。
「何をするつもりですか?」
「何ってこういう事よ」
その間にも下半身のズボンも脱いで下着だけになる。
「お断りします。俺はそういうつもりはないので」
「ええ〜、別に良いじゃん。君はお金払わなくてもやれるんだよ」
「だったら初めからそう言ってください」
「そんなこと言ったらついてこなかったでしょう?」
「ええ」
「まぁ、これでも飲んで少し落ち着いて」
そういって彼女は枕元にある白い液体をコップに注ぎ渡す。
「そうですね」
そういってコップに手を伸ばすときレイラは内心ほくそ笑んでいた。
がしかし、                                            
手を伸ばすと同時に一歩踏み出して士郎の射程に入った瞬間、目にもとまらない速さで 彼女の腹を殴った。
当然手加減はしてあるがそれでも女性が気絶する分には十分な威力であった。
とりあえずレイラをベッドに寝かせて液体を瓶に戻してから鍵を開けて士郎は部屋を出た。
 







部屋から出てきた士郎に誰もが目を丸くしていた。
しかし士郎はそんなことを気にせずカウンターの奥にいる店主だと目星を付けていた女性に問いかけた。
「説明してくれますか?」
「あ、ああ、、、いいよ。なにが聞きたい?」
「とりあえず全部」
「あたしはマイア。おまえさん名前は?」
「衛宮士郎」
「エミヤシロウ?」
聞き慣れない発音に彼女はとまどった。
「日本人です。」
「ああなるほど。それでシロウ、何か飲むかい?」
「とりあえず牛乳を」
「レイラはどうしたんだい?」
「とりあえず殴って眠ってもらいました」
簡潔にそう答えると同時に笑い声が響く。
「はっはっはっは、、、いやいや驚いたな。まさかこんな子供(ガキ)がいるとは」
その女性はビールの入ったジョッキを持つと士郎の隣に座った。
「あたしはラミス。で、何であいつを殴ったんだ?」
「俺はただあの人に少しつきあって欲しい、と言われて付いてきただけです。まさか媚薬を飲まされかけるとは思いませんでした」
「知って付いてきたんじゃないのか?」
「いいえ」
「そうか。なら説明してやろう。ここは『Ein Gasthaus』。本当はただのバーだったが今じゃああたし達娼婦のたまり場だ。あんたが連れて行かれた部屋はあんたみたいに気に入った男を連れ込むために後で作られたもんだよ。」
「さすがにおまえさんみたいな子は初めてだけどね」
「そういえばおまえ本当に男か?」
「男ですよ。よく言われます」
「まぁとにかく今日のとこは帰った方が良いね」
「そうさせてもらいます。それと牛乳は、、、」
「ああ、お代は良いよ。おまえさんには迷惑をかけたしね」
「それでは」
「今日はすまなかったねぇ」
「じゃあな。それとこの街には男の方もいるから気をつけな」
「ありがとうございます」
その言葉と共に士郎はドアを閉めた。
 







「全くレイラもとんだやつを連れてきたもんだね」
「まったくだな」
その時ようやく気が付いたレイラが隣の部屋から出てきた。
「痛たた、、、あの子は? 」
「もう帰ったよ」
「ええ〜かわいい子だったのに」
「やめとけ。あいつには手を出さない方が良いぞ」
「どうして?」
「あいつ格闘技かなんかやってる。おまえが何をしようが無理だな」
「よくわかったね」
「まぁな」
そう忠告する彼女は士郎のことを考えていた。
(今度連れ込んでみるか)
何気に彼女も士郎に目を付けていた。








 
「ただいま」
「お帰りなさい、士郎」
「どうだった?」
「そうですねいろいろな人がいましたが、、、」
「どうした?」
リィゾが言葉を濁した士郎に聞くと、
「フィナさんみたいな人って多いんですね」
「「ぶっ!」」
アルトルージュとリィゾが同時に吹き出した。
「士郎、フィナみたいな奴は特殊なのだ。気にするな」
「そうですか」
城に戻る途中に出会った人たちのことを思い出しながら士郎は食堂に向かった。
 後日、地元の新聞に数人の男性が路地裏で気絶した状態で発見されたことが小さく載った。








 
あとがき
どうもNSZ THRです。
今回はそういう話です。
管理人さんからOKが出れば何があったか書きます。
フィナが出なかったのは話をややこしくしないためです。
 『Ein Gasthaus』とはドイツ語で『宿』という意味です。


管理人より
     訂正版に入れ替えました。
     士郎に何が起こったんでしょうか?
     性徴としても過激すぎます。
     そして初体験も済ましたみたいで。
     そして人生の墓場行きですか。
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